神様の教育係始めました~冴えない彼の花嫁候補~


「うん。電話がつながらなくて。スマホ、持ってないんじゃないかな」


それからすぐに電話を切り、二課に連絡を入れた。


「篠崎です。十文字くんいますか?」


電話に出た事務の人に尋ねる。


『十文字さんならさっき下痢気味だから早退すると連絡が入って、課長が許可していましたよ。彼から連絡入ってないですか』

「下痢? ……あー、多分、スマホ持ってないんだと思います。それで私の電話番号がわからなかったんだと。あのっ、私も少し体調が悪くて早退したいのですが」


あんなことがあって仕事なんてしていられない。
幸いもうアポイントはないし大丈夫だろう。


『課長は会議中なので、伝えておきます。お大事に』


私は電話を切ると、車を発進させて白山稲荷神社へ向かった。

もののけの話を共有できるのは十文字くんだけ。

銀髪の男の話では、今度こそ大蜘蛛は消失したようだけど、ひとりでいるのが怖くてたまらない。