もののけがしたことなので谷津さんが反省する必要はまったくないが、真実を真由子に話しても理解してもらえるわけがない。


『どうも上司に、お前が漏らしたんじゃないかってネチネチ言われたらしいのよね。それで、ストレスがたまって爆発したのかなぁ。私もきつい言い方したし、しきりに謝ってきてかわいいから許しちゃった』


真由子の声が弾んでいる。
恋する乙女そのものだ。

とりあえず、ふたりの仲は元通りのようなので安心した。


『でもほんと、なんだったんだろ』
「うーん、なんだろうね」


谷津さん、ごめん。

彼はいざこざに巻き込まれただけでまったく罪はないが、どうかばったらいいのかわからず適当にごまかしてしまった。

それで、十文字くんは？　


「ねぇ、十文字くんはどうした？」

『言い争ってるうちにいなくなってた。彼、争いごとは苦手そうだから逃げたんじゃない？　合流してないの？』