それだけで泣きそうになりながら言葉を紡ぐ。
「真由子。谷津さんどうした?」
『それが、あれからなにしに来たんだっけってキョトンとして変だったの』
やはり谷津さんも憑依されていたに違いない。
それを銀髪の男が助けてくれたのだ。
おそらく彼が『足止めされた』と話していたのは、谷津さんを操っていたもののけを払うのに時間がかかったということだろう。
あの不思議な空間に連れていったのだろうか。
『それで、新商品の話なんてとっくに知ってるわよ! 愚痴はいいけど、企業秘密に関わることは一切口にしないって約束したでしょ?って怒ったんだけど、やっぱり首を傾げてて』
さすがは我が親友。
しっかりしていてホッとした。
しかし谷津さんは叱られ損だ。
『あんまり話が噛み合わないから、私が新商品の情報を盗んだって怒鳴り込んできたんじゃないの?って話したら血の気が引いて。それでもどうしても納得いかないみたいだったんだけど、最終的には不快な思いをさせて申し訳なかったって反省しきりだったの』
記憶がないのだから納得いかなくて当然だ。



