神様の教育係始めました~冴えない彼の花嫁候補~


「そ、うなんです。パンフレットを忘れてしまって。おっちょこちょいですよね」


なんとか取り繕い、もう一度サワーの説明を始めた。


彼と別れて屋外に出たあと、呆然と立ち尽くす。


「なんなの、これ……」


蜘蛛に追い詰められたときの光景を思い出すと、身の毛もよだつ。
ホラー映画に入り込んでしまったかのような衝撃的な経験だったのに、まるで何事もなかったかのように、平穏な時間が流れている。

米山さんの様子では、命の危機にあったことですら覚えていないのだろうなと感じた。



すぐさま駐車場の車に駆け込み震える手で十文字くんに電話を入れたが、コール音が響くだけで出てくれない。

もののけが憑依していたかもしれない谷津さんがどうなったのか気になるのに。


「今日、スマホ持ってたっけ……」


寝癖チェックはしたものの、スマホを持ってきたかどうかまでは聞いていない。
次に、真由子に連絡をした。


『もしもーし』


よかった。彼女は無事だ。