思わず十文字くんを叱るような口調で責めてしまう。
すると彼はクスッと笑う。
「お前は優しいんだな。今回はさすがに疲れた」
彼が私の膝の上に崩れ落ちるので目を見開く。
「すぐ救急車呼ぶから頑張って」
泣きそうになりながら近くに転がっていたカバンに手を伸ばし、なんとかスマホを取り出したものの圏外になっている。
「なんでよ!」
「あやめ」
彼は切なげな声で私の名前を呼び、右手を伸ばしてきて私の頬に触れる。
「苦しい?」
「苦しいよ。でも、お前を守れたから満足だ」
「そんな……。死んじゃうみたいなこと言わないで。死んだら許さないから」
私は彼の手を握り必死に訴える。
「そうだな。まだお前のそばにいたい。とにかく、元の世界に戻ろう。目を閉じて三つゆっくり数えるんだ」
「……うん」
私は彼に言われた通り、まぶたを下ろして三つ数えた。
「あれっ」



