「はい。篠崎さんがそうしろとおっしゃるので」
いや、そうしろと言われてもできないのが一般人だよ?
あなた、何者?
「十文字くんって、本当はすごく賢いの?」
ストレートすぎる聞き方をしてしまいちょっと後悔したものの、彼に遠回しな質問をしてピタッと答えが返ってきたことがないのでこれでいいと思い直した。
「さあ、わかりません」
彼はごまかしている感じもなく、ごく真面目に答える。
「どうしてそんなことを聞くんですか?」
「どうしてって、なんとなく会話を思い出すことはできるけど、完璧に再生なんてできないでしょ?」
「できないんですか!?」
彼はできないことを初めて知った!という様子で、興奮気味に身を乗りだしてくる。
あー、今のグサッと来た。
できないなんてバカなの?と言われたのも同じだ。
「できないわよ!」
「そうなんですか。できないのかー」
しきりに感心しているけれど、もしかして今まで知らなかった?
賢すぎる人は、一般人の苦労なんてわからないとか?