啖呵を切ったものの、殺されるとわかっていて怖くないわけがない。
体がガクガク震えて、足が動かない。
嫌だ。もののけに食べられるために生まれてきたわけじゃないの!
いくら心の中で強がっても、顔が引きつっているのが自分でもわかる。
じりじりと追い詰められて、とうとう気色の悪い足が伸びてきた。
緊張と絶望で吐き気がこみあげてくる。
もうどうにもならないと脱力しかけたそのとき、蜘蛛の向こうになにか動くものが見えた。
それは動かなくなっていた銀髪の男で、高く跳び上がったかと思うと、あの剣を大蜘蛛の多数ある目のひとつに突き刺した。
まるでスローモーションでも見ているかのように、大蜘蛛が私の上に崩れ落ちてくる。
全身に鳥肌を立てて気絶する寸前に、銀髪の男が私を抱えて離れた。
大蜘蛛はドンと大きな音を立てて倒れたあと、消えていく。
それと同時に米山さんの姿も見えなくなった。