米山さんが気になり自由に動けない銀髪の男と、彼の命なんてどうでもいい蜘蛛では、圧倒的に蜘蛛が優位だ。
銀髪の男は果敢に挑むも、剣を使うことすらできず一方的に攻撃を受けてしまう。
そのうち彼の右頬に血が滴った。
蜘蛛の脚が当たり切れたのだ。
それでも彼はひるまない。
何度でも飛び込んでいく。
彼のパンチが米山さんに入り、深沢さんのときのように一瞬蜘蛛が離れた。
おそらく急所を外して衝撃を与え、分離させているのだろう。
米山さんから離れさえすれば銀髪の男の独擅場になるはずだった。
しかし……。
彼が剣を振り下ろすのが見えたが、蜘蛛はとっさに糸を出し米山さんの体をぐるぐる巻いて拘束し、その剣の目の前に差し出してくる。
「嫌っ」
私は思わず目を閉じた。
あの剣が米山さんに突き刺さるのを見ていられなかった。
――ドサッ。
「米山さん?」
人が倒れ込むような鈍い音がしたので恐る恐る薄目を開けると、倒れ込んでいたのは銀髪の男のほうだった。