絞められていた首に触れながら深呼吸して酸素を貪っていると、彼は倒れ込んだ私を抱きかかえて、蜘蛛から離れた場所に移動する。しかし、前回とは違い彼も息が上がっていた。


「遅くなって悪かった。足止めされたんだ」


足止め?


「手こずらせやがって。人には手を出せないと気がつきやがった」


人には手を出せないって……。

人に憑依していれば、人間ごと切るわけにはいかないため、あの青白く光る剣で一掃できないことに気づいたということ? 

ハッとして大蜘蛛に視線を移すと、再び米山さんと一体化したようだ。
やはり、私の憶測は当たっている。


「でも、心配するな。すぐに片付ける」


銀髪の男は、私を安心させるかのようにつぶやき離れていった。


「あやめに指一本触れるなと忠告したはずだ。もう、生かしてはおけない」


彼は素早い動きで懐に飛び込んでいったが、蜘蛛も学習しているようだ。
スッとよける。