翌週の水曜日。
私はまた十文字くんと一緒に営業に飛び出した。

今日は米山さんに飲んでもらうサワーを準備している。


「米山さん、小売店協会の会議があるらしくて十時前に少しだけなら会ってくれると言ってたから、急いで向かおう」


十文字くんと話しながら社屋を出たところで足が止まる。


「真由子?」


そこには先に出たはずの真由子と、ガイアビールの谷津さんがいたのだ。
しかも、ふたりはなにやら言い争いをしている。


「ちょっと、どうしたの?」


時間がないが放置もできない。
私は真由子を引っ張って止めた。


「谷津さんが、ガイアの情報を私が盗んだというのよ。愚痴は聞いたけど、聞いてはまずい話なんて心当たりないし、もちろん私もエクラの内情なんて話してないのに」


おそらく真由子の言っていることは正しい。

彼女は私と同じくお酒に強いので簡単には酔わないし、いくら惚れた男だからといって機密情報を流すような人じゃない。

それに、新人から聞き出せる情報なんて自力でつかんでくるので、いちいち盗むまでもないことが多い。