それに加えて、ガイアはずっと価格勝負ばかりしてきた会社なので、得意先で「それで販促金出るの?」という話になってしまい、商品の説明をまともに聞いてもらえないというジレンマもあるそうだ。
大きな会社で、すぐにいい条件を出してもらえてうらやましいと思っていたけれど、エクラとは違う悩みがあるらしい。
「隣の芝は青いんだろうね」
車へと歩き始めたあとボソッとつぶやき振り向くと、ついてきていると思った十文字くんは足を止めて谷津さんが店内に入っていく様子を凝視している。
「十文字くん、どうした?」
「いえっ。谷津さん、すごく疲れたオーラが出てるなと思って」
そんなオーラ、わかるの?
「ノルマが大変みたいよ」
「そうでしたか……」
彼は納得した様子でうなずき、私と並んで歩き始めた。