「そうでしたか。あっ、米山さんがお待ちです」

「それでは、失礼します」


彼は十文字くんをチラッと視界に入れてから離れていった。


「彼、同じ歳だって。十文字くんもひとりで大丈夫そうよね」


どうやら谷津さんはこれまで広報にいたそうで、営業として担当を持ったのは今回が初めてらしい。

十文字くんにささやくと、彼は眉根を寄せる。


「突き放さないでくださいよー」

「十文字くん、前よりずっとよくなってるじゃない。ここは心を鬼にして、放り出したほうがいい気がしてきた」

「無理です。無理」


顔色まで悪くなってきたのでからかいすぎたと反省した。


実は真由子の話では、ガイアは研修もそこそこにすぐにひとり立ちさせるらしい。
しかもいきなりノルマをてんこ盛りにされるので、新人の離職率が高いとか。

谷津さんもノルマの多さに苦しんでいて、その話を聞いたと言っていた。