「それでは、仕事のお話を。今日はビールではなくサワーのご紹介です。実は他店さんで少し置いていただいたところ、かなりの勢いで出ていまして――」


十文字くんが頑張って、バリューショップで棚落ちしたネクスト黒の代わりにわずかなスペースにねじ込んできたのだ。

どうやら担当の山本さんは頑としていらないと拒否だったらしいが、ガイアさんに取られてかわいそうにと同情してくれたパートさんの押しで少しスペースをいただけたのだとか。

いい男って、得だ。


「弊社のサワーは炭酸が強いのが特色で、最近は女性にも大人気なんです」


最初は相変わらず聞いているだけの十文字くんだったが、「とりあえず置かせていただいた三ケースは一日経たずして売れまして、大好評のようです」と付け足した。


営業の腕、上がってる。

最近は午後だけ一緒に行動することが多かったけれど、これほど顕著に彼の成長を目の当たりにしたのは初めてだった。