「はい。天国から見守ってくれていますね、きっと」
「ありがとう」


彼は悲しげに微笑み大きくうなずいた。


「あっ、ガイアさん」


そのとき、私たちの背後に視線を向けた米山さんがつぶやいた。どうやらガイアビールの訪問と被ってしまったようだ。

ガイアは最近担当がシャッフルされて、四十代後半の男性から、十文字くんと同じ歳の担当者に交代した。


しかも彼――谷津(たにづ)さんは、真由子の片思いの相手なのだ。

彼女の担当先とも一部被っていて、雑談しているうちに仲良くなったと真由子が先日白状した。


まさか商売敵が恋の相手だとは思わずかなり驚きもしたが、同じ業界の者同士、悩みも行動パターンも似ているので、意気投合する気持ちはわからないではない。

ただ、成就するかどうかは難しいところだ。


「こんにちは。お気になさらず、続けてください」


彼は私たちを見て、一旦外に出ていった。
気を使ってくれたらしい。