「かわいがっていただけてうれしいです」

「かわいがるっていうか、もみくちゃだな。いい男は罪だねぇ」


私の隣の十文字くんはフルフルと首を横に振っている。


「米山さん負けてませんよ?」

「もちろん、負けたつもりはないけどね。でも、パートさんにはスルーされるんだよねー」


米山さんはお茶目に笑った。
こういう会話にも乗ってくれるので、話しやすいのだ。


「米山さん。目、どうかされたんですか?」


彼の目が赤くて、少し腫れているように見える。


「恥ずかしいところを見せちゃったね。実はうちの猫が病気で死んでしまって」
「そうだったんですね。それは……」


言葉も出ない。

彼は無類の猫好きで、家で三匹飼っていたはずだ。
スマホに保存してある猫の写真を何度か見せてもらったことがある。

しかも三匹とも捨て猫で、保護して大切に育てた素敵な人だ。


「悲しいに違いないけど、いつまでも泣いていたらチビに笑われると思って。頑張らないとね」