「うん、ありがと。……さて、山本さんのところ、ネクスト黒の棚落ちの分、サワーを入れようと思ってるんだけど」
考えても堂々巡りだ。
私は気持ちを切り替えて仕事に集中することにした。
「もしかして、僕がやるんですか?」
「当然」
あからさまに顔をしかめる十文字くんだけど、ビシバシ鍛えるわよ。
「えぇー、無理です」
「無理じゃない。シャキッとする!」
「あはっ。お母さん、スパルタ」
真由子が茶化してくるが、手は抜かないわよ?
「教育資料を大至急完成させて、次回から合流するから」
「本当ですか?」
銀くんみたいなキラキラの目ですがりつくのはやめて。
「でも、私はサポートね」
「それでもいいです!」
あからさまにテンションが上がった十文字くんに、私も真由子も噴き出した。
蜘蛛に襲われてから不気味なほどになにもない。
ずっと感じていたもののけの気配もぴたりとなくなっている。