「驚きましたが大丈夫です。深沢さん、資料はほとんど仕上げられましたよ。もう二、三日いただければ完成します。それに、新人さんの指導は別の方にお願いすることになっていますし」
「あぁ、それは聞いている。すでに打診してあって快諾されていると。その資料ができたら、今までの業務に戻っていいから。十文字を頼むぞ」
「わかりました」
深沢さんの退職は、残念ではあるがホッとした気持ちもある。
彼が悪いわけではないとわかっているものの、あんな体験をしたあとなので一緒に仕事ができるか不安だったからだ。
もののけさえいなければ……。
私が特殊な存在だから、深沢さんが犠牲になってしまった。
やっぱり、私が悪い?
「篠崎さん」
自分のデスクに戻って呆然としていると、十文字くんに声をかけられた。
「篠崎さんは悪くないです」
心の中を読まれたかのようなことを小声で伝えられて目を瞠る。