ただ、今までは年上が絶対条件だったので、ストライクゾーンが広がったことには違いない。
「なるほどね。狙ってる年下くんがいるんだ」
「鋭いわね」
ビンゴか。
「あとで事情聴取するから。そろそろ始業時間だよって、そういえば十文字くん!」
ちゃんと来てる?
私たちは慌てて二課に戻った。
十文字くんは相変わらずギリギリに滑り込み、寝癖直しスプレーをひと吹きする。
それからすぐに課長が入ってきて、深沢さんの退職が発表された。
「篠崎、ちょっと」
「はい」
私が呼ばれたのは、彼と一緒に仕事をしていたからだ。
「深沢くんが、中途半端で放り出して申し訳ないと言っていたよ。本来ならきちんと引継ぎしてもらうんだが……」
課長は複雑な事情を知っていて、急な退職を受け入れたのだろう。
もしかしたら私たちが知らなかっただけで、深沢さんはかなり病んでいた可能性もある。