「だよね。それで深沢さんも商品開発部にいづらくなって、異動願を出したんだって。深沢さん、二課に来てからはなんでもない顔して仕事してたけど、実は結構こたえてたらしくて」
「そりゃそうだよ」
同意の相槌を打つ。
私は知らなかったけれど、事情を知っている人たちからは好奇の眼差しを向けられていたのだろう。
特に女子社員は、そうした類の話に食いつく人が多い。
「なにも悪くないのにお気の毒。それで、ついに耐えきれなくなったのか、突然退職させてほしいと連絡が来たんだって」
ふたりで仕事をしているときは、そこまでのダメージは感じなかったのに。
でも、あの蜘蛛に操られていたからだったのかな。
銀髪の人も深沢さんの弱っているところに付け込んだというような言い方をしていた。
「そっか。なにもできなかったな、私……」
「あやめが気を揉むことはないよ。知らなかったんだし、偶然サポート役に抜擢されただけだもん」
「……うん」