「深沢さん、どうも退職するみたい」
「え!」
驚きすぎて大きな声が出てしまい、彼女に口を押さえられた。
「しーっ。まだ正式発表じゃないから。深沢さんの元奥さん、商品開発部の後輩だったって知ってる?」
「そうだったの?」
色恋沙汰にはあまり興味がなくて、初耳だ。
「うん。それで浮気されたらしいんだけど、その相手も商品開発の後輩――」
「えーっ!」
不倫相手も同じ部署の社員だったの?
「声が大きいって」
真由子は険しい表情で私を叱る。
「ごめん。びっくりして」
「知らなかったか。奥さんは結婚を機に退職してるけど、浮気相手は何食わぬ顔して一緒に働いてたの。不倫が発覚したあとさすがに退職したんだけど、深沢さんの元奥さんとまだ続いてるみたい。それであっちが本命だったんだねなんて騒がれて」
「そんなのあんまりじゃない」
夫婦にしかわからないいざこざがあったかもしれないが、それならそれで離婚してから付き合うべきだ。