十分ほどで駅に到着すると、改札の前で立ち止まる。
「十文字くん。歓迎会のとき、私の家から遠いのに送ってくれたんだね」
「篠崎さんは僕の大切な人ですから」
照れもせずこういうことをサラッと言えるのが彼のいいところだ。
「ありがとう。また月曜ね」
彼に背を向けて歩き出した瞬間、腕をつかまれて驚く。
「篠崎さん。僕、なにもできませんが、いつでも泊まりに来てください。銀がご飯をおねだりするかもしれないですけど」
「うん、そうする。今度はスーパーに買い出しに行かなくちゃ」
と言いながら泣きそうになり、必死にこらえる。
ひとりになるのが怖くてたまらない。
けれども、これ以上彼を振り回すわけにはいかない。
彼も私も、どう考えてもあのもののけたちに勝てる要素はないが、頼れる人がいるのがこんなに心強いとは。
「それじゃあ」
今度こそ改札をくぐると涙が一粒だけ頬を伝った。