「それじゃあ」
玄関まで見送りに出てくれたふたりに、もう一度頭を下げる。
「駅まで行きます。銀、留守番してて」
「うん」
玄関で十分と言ったのに、十文字くんは駅まで送ってくれると言いだした。
留守番の銀くんには申し訳ないけれど、やっぱり心強い。
肩を並べて住宅街を歩きだすと、彼が口を開いた。
「なにが起こっても、篠崎さんは余計な責任を感じなくてもいいと思います」
「えっ?」
「全部もののけが悪いんです。優しすぎると、付け込まれますよ?」
もののけという信じてもらえなくてもおかしくない話をしたのに、彼は受け止めてくれている。
それだけで心が軽くなる。
「そうだね。昔、ウザイ!ってすごんだら逃げていったこともあるし」
「さすがです」
そこを褒められても、うれしくないような。
しかし、彼の言う通り気持ちは強く持たなくては。
あの銀髪の人の話では、深沢さんも離婚のダメージに付け込まれたようだし。
でも、深沢さんの離婚をどうして知っていたのだろう。