「ご飯のお礼にこれをあげます!」
彼が差し出したのは、白狐のキーホルダー。
しかし手作りなのか顔がつぶれていて、なんともブサイクだ。
「ありがとう」
けれど、彼の心遣いがうれしくて受け取った。
「絶対にいつも持っていてください」
「う、うん」
とはいえ、カバンにつけて歩くには手作り感が満載で恥ずかしいような……。
だから私は、カバンの内ポケットのファスナーの金具に取り付けた。
私たちのやり取りを、十文字くんも笑顔で見ている。
「本当にお世話になりました。そろそろ帰るね。お兄ちゃん、ちゃんとご飯食べさせてあげてよ」
「篠崎さんが作ってくれれば……」
「甘えないの」
いつも一緒にいられるわけじゃないんだから。
でも、ご両親もおらず男ふたりで奮闘しているのだから、また手伝ってあげてもいいかも。
そう思ってしまうところがお母さん気質なんだろうな。