想像通りではあるが、こんな幼い子に負けるとは。
「髪もボサボサだし服も似合ってないし。でも、あやめ様が直してくださったんですよね!」
あぁ、あのデートのことを言っているのね。
「うん、まあ……。素材はいいんだから、整えればいいのよ」
実際、得意先のパートさんたちの目がハートになっているし。
「本当に助かります! 僕じゃわからなくて」
「あたり前よ」
「今度はだらだらしたところも直してください」
きらきらした目で懇願されても、それはかなり難しい。
「うーん。頑張ってみる」
「はい」
しかし、弟にそんな指摘をされるとは。
彼に面倒を見てもらっているというのは、あながち嘘でもなさそうだ。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
苦言を呈している銀くんだけど、十文字くんのことは大好きな様子だ。
彼が戻ってきた途端、弾けた笑みを見せて玄関にすっ飛んでいった。