「朝食作ろうと思ったんだけど、材料がなにもなくて」


たまごがあとひとつと牛乳、そして調味料しかない。


「銀、まだ寝ているんですけど、お願いしていいですか?」

「ん?」

「コンビニ行ってきます。いるもの教えてください。篠崎さんのご飯、食べたいです」


やっぱりお母さんしないと、と思いつつ笑顔でうなずく。


「それじゃあ、たまねぎと」
「たまねぎはいりません!」


ブンブン首を横に振る彼に、いつかこっそり食べさせたい。


「わかったわよ。じゃあね――」


私はいくつかの買い出しを頼んだあと、社務所の中に戻った。



居間でお茶を飲んでいると、銀くんが寝ぼけ眼で顔を出した。
浴衣は乱れたままだ。


「志季様、おはようござ……。あやめ様!」


彼は私を十文字くんと間違えたらしいが、すぐに気づいて胸に飛び込んできた。
なんてかわいいんだろう。