「でも……」

「今日はひとりでいるのが怖かったの。だから泊めてもらえただけでありがたいよ」


彼は納得していないようだったが、渋々うなずいた。


「そろそろ寝る時間だね」


これ以上十文字くんに迷惑はかけられないと思い、彼を寝室に促すことにした。

私は眠れそうにないが、幸い明日は会社は休み。
ひと晩眠れなくてもなんとかなる。


「眠れますか?」


やっぱり鋭い。


「うーん。なんとかなるでしょ?」


彼があまりに深刻な表情で尋ねてくるので口角を上げたものの、多分なんともならない。

十文字くんが隣にいても思い出すだけで震えるのに、眠れるわけがない。


「そうだ! 篠崎さん、こっち」


彼はなにか思いついたという顔をして居間を出ていくので、首をひねりながらついていく。

廊下を少し歩き襖を開けると、和室に布団が一組敷いてある。
私のために用意してくれたのかな。


「いろいろごめんね。ありがとう。それじゃあ、おやすみ……ん?」