しかしこれが想像通り不器用すぎて……。
「あっ!」
洗剤で洗った皿を彼に渡して流してもらおうとすると、手を滑らせてシンクに落とした。
「ごめんなさい」
いつものように眉をハの字にして反省しきりの彼に焦る。
「割れなくてよかったじゃない。ここは私がやるから、銀くんをそろそろ寝かせないと」
食べたてだけど、いろいろあったからもう二十二時になる。
「わかりました」
彼はしょげたまま銀くんを連れて別の部屋に行った。
「弟の前でもあのままなんだ」
少しはかっこつけたりしないのかな?
でも、十文字くんらしくてホッとする。
皿洗いを済ませた頃、十文字くんが戻ってきた。
「もう寝たの?」
「はい。いつもコテンと」
寝つきがいいのはうらやましい。
私は最近、自宅の周辺にももののけの気配を感じているので、なかなか眠れない。
「お茶、飲む?」
「はい」
自分の家のように振る舞ってしまったが、彼にお願いするより自分でやったほうが早い。