さっきの光景を思い出すと、今でも涙がこぼれそうになる。
けれど、十文字くんに心配をかけたくないし、今は銀くんにおいしいご飯を食べさせてあげたいという気持ちで、あの恐怖を少しは忘れられている。
「安心してください。ここは神様のいる場所ですから、守ってくれます」
「十文字くん……。ありがと。でも適当な神様って言ってなかったっけ?」
「気のせいですよ」
気のせいじゃないから。
とぼける彼があまりに優しい目で私を見つめるので、気持ちも落ち着いた。
もしかしたら、十文字くんならもののけの話をしても信じてくれるかもしれない。
少なくとも、バカにはしないと思う。
あとで話してみようかな。
私はそう考えながら、お米を研ぎだした。
ご飯が炊けるまでの間、銀くんが入れてくれたお風呂に入らせてもらった。
十文字くんのぶかぶかのジャージを借りて、ふたりまとめてお風呂に送り出したあと、オムライスを作り始める。