炊飯ジャーを始め家電や調理道具はそれなりにはそろっている。
どれもピカピカなのは、使っていないからだろう。


「篠崎さんって、料理までできるんですか?」

「あのね、オムライスくらいで目を輝かせるのはやめてくれる?」


私の印象はオムライスも作れない人だったということになる。


「玉ねぎないけど我慢ね」
「玉ねぎは嫌いなのでいりません」
「十文字くんの意見は聞いてない。銀くんのためよ!」


玉ねぎは嫌いって、子供か!と突っ込みたいところだが、彼らしいなと笑みがこぼれた。


「よかった」
「なにが?」
「篠崎さん、笑ってる」
「あ……」


いちいち鋭い彼に驚いたものの、たしかに笑えている。

銀髪の人が助けてくれなければ、きっと私は餌になっていた。
なにが起こっているのか理解できないうちに、命を落としていたのだ。

あのままひとりで自宅に帰っていたら、今頃部屋の隅で膝を抱えて泣いていただろう。