「すみません。主従ごっこが好きで」
十文字くんがさらりと言う。
〝主従ごっこ〟ってなに?
ちょっと変わっているのは弟くんも同じ?
「銀(ぎん)。こちらいつも話している篠崎あやめさんだ。今日は泊まっていただくから風呂の準備をして」
「かしこまりました!」
十文字銀って、これまた渋いお名前で。
しかも、あんなに小さな子が『かしこまりました』って。
主従ごっこがよほど好きなのかな。
十文字くんが〝主〟なのが、ちょーっと腑に落ちないんだけど。
「散らかってますけど、どうぞ」
「お邪魔します」
一階建ての瓦葺きの社務所は新しいとは言い難い建物だが、生活するのには困らないだけの広さはありそうだ。
中に足を踏み入れると、廊下の床や柱は年季が入った深い黒茶色をしている。
掃除はされているようだけど、もしかして銀くんがやっているの?
彼についていくと、居間らしき場所に案内された。