「あぁ、弟です。僕がなにもできないので面倒を見てくれているというか……。篠崎さんのことはいつも話していて、弟も知っているので大丈夫です」


なにもできないという部分に関してはうなずける。
あの寝癖も、服装のだらしなさも知っているからだ。


「……うん。あっ、お邪魔するんだからお参りしなくちゃ」


暗い電灯がひとつ灯っているだけなので不気味で、できれば一刻も早く社務所の中に入りたい。

でも、それでは失礼な気がした。


「明日で十分ですよ。今はすこぶる適当な神が担当……いや、祀られているので、そんなことは気にしません。どうぞ」


えぇっ。
神主さんではないとはいえ、適当な神なんて言ってバチが当たらない?

驚いたものの玄関を開けられてしまったので、従うことにした。


「志季様、おかえりなさいませ」


パタパタとかわいい足音を響かせて出てきたのは、小学校低学年くらいの男の子。

面倒を見てもらっていると言っていたので、てっきり成人した男性が出てくると思っていたので拍子抜けだ。

しかも志季様って? 
兄に〝様〟をつける人なんて知らない。