初耳だったので驚いたが、そういうこともあるのか。

でも、まったくお金にならないって、なかなか現実的なご意見で。
神に仕える身でも、お金がないと生きていけないのにはうなずける。


「白山(はくさん)稲荷神社?」

「はい、俗に言う〝お稲荷さん〟です。昔からここにあるんですけど、新しい住宅街ができて、完全に浮いています」

「あはは」


彼の話に納得した私は階段を上がり始めた。


「お稲荷さんってことは、狐が祀られているの?」

「狐は神の眷属(けんぞく)なんですよ。祀られているわけじゃありません」

「え!」


てっきり、狐が祀られているのが稲荷神社だと思っていたのに、勘違いだったらしい。

鳥居をくぐると正面に拝殿があり、その向こうに見える大きなクスノキは時折吹く風にあおられてざわざわと葉音を立てていた。

神社の境内の右手にある社務所には電気がついている。


「そういえば、もうひとりって?」


いきなりお邪魔して迷惑じゃないの?