串さとの件といい、彼の危険察知センサーはとんでもなく優秀のようだ。

冴えないはずの十文字くんが不穏な空気を感じ取っていたというのに、私はまた危険を回避できなかった。

あんなに体調が悪くなっていたのに、まさか深沢さんがもののけに憑依されているなんて、想定外すぎて。

とはいえ、情けなくて悔しくて、盛大にへこむ。


「そっ、か……」
「とにかく、立てますか?」


十文字くんは私の手を自分の肩に回して立たせてくれた。


「心配かけてごめん」
「篠崎さんが無事ならそれでいいです。ここからだと僕の家のほうが近いです。心配だから連れていきますよ」


普段は決断力が欠けている彼らしくなく、主導権を握って次の行動を決める。

こんなこともできるんだと妙な感心をしつつうなずいた。
今日はひとりでいたくない。


彼は大通りでタクシーを捕まえて私を押し込み、運転手に住所を告げた。
しかしその住所が私の家とはまったく別の方向なので驚いてしまった。