ここは、さっき食事をしたレストランのすぐ近くだ。
深沢さんの姿はもうなかった。


歩道の真ん中に座り込んでいる私を、通りかかる人がじろじろ見ていく。

まだ恐怖が拭えず、体が震えている。
それでもここにいるわけにはいかないと、立ち上がろうとした。


「篠崎さん」


どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきたと思ったら、背後から駆け寄ってきたのは十文字くんだ。


「大丈夫ですか?」
「う、うん。どうして……」


ここにいるの?


「前に、スマホの位置情報の交換をしたじゃないですか」


そういえば、深沢さんの仕事を手伝うようになり、外回りをしている彼のところに途中から合流することもあった。

そのときに今いる場所を聞いてもピンとこず、スマホに頼ることにしたんだった。


「そうだったね」


それにしても、どうして? 
仕事も終わっているこの時間に、普通検索をかけたりしないでしょ?


「もしかして、深沢さんと約束してるのかなと思ったら、いてもたってもいられなくなって。どうしても深沢さんがいい人には思えないんです」


彼はバツの悪そうな顔で告白してくる。

会社で迫られているところを見てから、ずっと気にしていたのかもしれない。