「もう、ヤダ……」
男運が悪いどころの騒ぎじゃない。
食われるなんて、意味がわからない。
恐怖と混乱で涙があふれてきて止まらなくなった。
これからどうすればいいの?
「あぁっ、泣くな」
彼は困ったようにそう口にしたあと、私を力強く抱きしめてきた。
「なんとかしてやる。だから泣くな」
「怖い……」
彼の広い胸の中でつぶやく。
「いつも周りにもののけがたくさんいるの。食われるなんて……」
「お前を食えるのは、上級のもののけだけだ。中級、下級のもののけは大蜘蛛のようなもののけの下僕だと思っていい。下級はせいぜい周囲をうろついてダメージを与えるだけ。中級はちょっかいをかけては来るが、人間を食らう力はない」
もののけ界のヒエラルキーってそういうこと?
ということは最近よく現れるカエルや男の子が中級なのかもしれない。
そして大蜘蛛が上級か。
「だから、命にかかわるのは上級が出現したときのみだ」