「残念ながら、お前はもののけにとって特殊な存在なんだ。何百年かに一度生まれてくるのだが、成熟したそうした存在を食らうと不老不死になれる」
なにを言っているのかまるで理解できないけれど、もしそれが本当の話なら、この人も私を食べようとしてるのだろうか。
もののけたちを払ったのは、代わりに私を食べるため?
逃げなくちゃ。
とっさにそう思ったのに、腰が完全に抜けていて立ち上がることすらままならない。
体を引きずるようにしてあとずさると、彼は驚いたような表情を見せる。
「お前、もしかして俺が食うと思ってるのか?」
違うの?
「俺をもののけと一緒にするな。お前を食う趣味はない」
趣味って……。
もののけでないのなら、あなたは一体何者なの?
疑問だらけでキャパオーバーだ。
「ふ、深沢さんは?」
「さっきの男か。先に元の場所に戻ったんだろ。蜘蛛に意識を乗っ取られているときの記憶はないから、お前を襲おうとしたことは覚えてはいないはずだ。それに、ケガをしないように手加減しておいたから問題ないだろう」