その蜘蛛の腹部は黒に黄色の線が入っており、私の背よりずっと大きい。
脚に細い毛が生えていて、見ているだけでも吐き気を催す。


「なにが嫁だ。餌にしたいだけだろ」


銀髪の男は意識を失っているように見える深沢さんには目もくれず、大きな蜘蛛に向かって話している。


「この女を食らえば、不老不死が手に入るんだろ?」


この女って、私? 
私を食べると不老不死になるの?

勝手に進む会話がまったく呑み込めない。


腰が抜けたまま呆然として見ていると、大きな蜘蛛が突然体をブルンと回して腹部をこちらに向け、白い糸を吹きかけてきた。

しかし、銀髪の男がいとも簡単にその糸を剣で切り、大蜘蛛に向かっていく。


「失せろと言ったはずだ。俺に敵うわけがない」


そして極めて落ち着いたトーンで言い放ち剣を振ると、青白い光が蜘蛛の腹部に刺さり、瞬時に大蜘蛛の姿が消え去った。

それと同時に、倒れてびくともしなかった深沢さんの姿までもが消失した。