でも、私がもののけに囲まれていることがわかっていて、それを追い払えるのにしなかったのはどうして?


深沢さんのことがよくわからない。

私はとにかく早く帰りたくて、黙々と食事を続けた。

最後に出された熱いコーヒーを焦って飲んだため、舌がピリピリしている。


「それじゃあ、出ようか」
「はい」


幸いなことに、あれからだるさは消えている。
しかし嫌な感覚はまだあり、近くにもののけがいることを悟っていた。


深沢さんから離れたら、また襲われる? 

でも、彼と一緒にいるのも怖い。
ふたりきりになるときに決まって苦しさが襲ってくるからだ。


「ここじゃタクシーも捕まらないね。少し歩こうか」
「はい」


大通りまで歩けばタクシーも走っているだろう。
私たちは大通りまでの数百メートルを、肩を並べて歩きだした。


「それで、返事は変わらない?」
「あっ……」


私、告白されているんだった。