いくらデートでも、もののけだらけの中で食事をしているとなれば逃げだしたくもなる。
「そう」
彼は私をじっと見つめて「仕方ないね」とつぶやき、指をパチンと鳴らした。
すると、真空パックされていた体の周囲にすごい勢いで空気がなだれ込んできたみたいに圧迫感がなくなったので、目が真ん丸になる。
「言ったよね。助けられるって」
それじゃあ、追い払ってくれたの?
こんなことができるなら最初からしてほしかったのが本音だけれど、助かった。
唖然としていると、彼は口元に笑みを浮かべて、何事もなかったかのように再び食事を始める。
「篠崎さん、趣味は?」
「これと言って……。お酒を飲むことくらいです」
「あははは。さすがビールが好きでうちの会社に入っただけのことはある」
どうして平気でいられるの?
私よりずっと慣れているから?
それとも、さっきのように彼自身がもののけをコントロールできるから?