私が悪いのかな……。
「私のこと、怖い?」
「いえ……」
その歯切れの悪い返事は、怖いと言っているの?
「教育担当を誰かに変わってもらおうか?」
課長に直訴すれば考えてくれるはずだ。
私ははっきり物をいうタイプなので、もっと優しく指導してくれる先輩が向いているのかも。
「いえっ、篠崎さんがいいです。篠崎さんに叱られると、ギュッと気持ちが引き締まるんです!」
彼にしては珍しく大きな声での反論で、私は正直驚いた。
でも、まさかのドM発言?
いじめられると、キュンとしちゃうタイプ?
「そ、そう……。それじゃあ、頑張りましょう」
「はい」
次の店に移動するために十文字くんが車を発進させたあと、再び話し始める。
「ところで、さっきのブラックコーヒーの話。十文字くんもそう?」
彼の高校生時代を想像しても、どうしても彼女の存在は浮かんでこないが、かっこつけたいという願望はあったかもしれない。
ただ、会社ではコーヒーに砂糖もミルクも入れているような気はする。