今日は体が重いというよりは、全身を真空パックにされていくような感覚がある。
四方八方から押さえつけられて息が苦しい。
けれど、せっかく食事に誘ってもらったのだしと、笑顔を作った。
イタリアンレストランはタクシーで十五分ほどの距離にあり、レンガ造りの壁がおしゃれなお店だった。
「素敵なレストランをご存じなんですね」
「気に入ってもらえたならよかった」
窓際の席に座り、ワインで乾杯をしたあと食事を始めた。
「篠崎さん、すごく飲める人なんだって?」
「誰に聞いたんですか? 実はビールが好きでこの会社に入ったんです」
深沢さんとふたりきりで食事なんて緊張すると思っていたのに、彼の話術が巧みだからか話が弾む。
「そっか。俺は……商社狙いだったんだけどことごとくダメで、滑り止めみたいな形で入ったんだ。でも、今はエクラに入社してよかったと思ってる」