てっきり電車に乗って移動するのかと思いきや、ロータリーでタクシーに乗り込んだ。


「イタリアンなんだけど、嫌いじゃない?」
「大好きです」
「それはよかった」


タクシーに乗り込んだ瞬間、嫌な空気を感じたのでキョロキョロしながら答える。


「どうかした?」
「あの、深沢さんって……。いえ、なんでもないです」


もののけが見えるのか尋ねようとしたが、運転手に聞こえていると口を閉ざした。


「なんでも遠慮なく聞いて? 俺も篠崎さんのことを知りたいし」
「わかりました。あとで」


何気なく言うと、彼は軽く口角を上げて私と視線を絡ませてくる。


「篠崎さんと食事に行けるなんて光栄だな。今日は楽しくなりそうだ」
「いえ、こちらこそ」


今まで付き合ったどの男性より大人の雰囲気漂う彼にたじたじになる。

その一方で背中に冷たいものが走った。
やっぱりなにかいる。