「俺とのこと、考えてくれた?」
「あのっ、私……今は恋愛モードじゃないというか……。深沢さんのように素敵な方に好意を寄せていただけるのはとっても光栄なのですが――」
「それなら、デートしてみない? 篠崎さんが仕事に没頭したいと思っている真面目さは理解しているつもりだよ。でも、彼氏がいたってそれが無理じゃないことを証明するから」
この押しの強さを十文字くんにも見習ってほしい。
とはいえ、断ればあきらめてくれると思っていたので、なかなか引かない彼に戸惑った。
「深沢さん、女子社員から大人気じゃないですか」
真由子の顔を思い浮かべて言う。
彼女には深沢さんから告白されたことを話していない。
彼にあこがれている彼女には話しにくいのだ。
ただ真由子も、〝素敵な人〟程度で〝好き〟までは行っていないとは思う。
彼女が真剣に恋をすると、目に見えるところでは騒がなくなるからだ。
「でも、篠崎さんが好きなんだ」