私にべったりの十文字くんは、深沢さんとの一件があってからますます距離を縮めてきたように感じる。
私が社内に残り彼が営業に出ていても、得意先の訪問が終わるたびに電話をよこして進捗状況を伝えてくるようになった。
しかしこれが意外にも大正解。
すぐに状況の確認ができるので、彼がうまくやれなかったことを聞き出してアドバイスをしたあと、もう一度店内に向かわせることもできる。
最近十文字くんのおどおど感が薄れてきたよと、リカーショップの米山さんから耳打ちされたが、いざとなったらすぐに私に頼れるといううしろ盾ができたせいなのかもしれない。
『篠崎さん。例のジュースを採用してくださるそうです!』
その日の最初の電話報告は、高校前の商店の新規採用についてだった。
「やったじゃない!」
店の規模が決して大きくはないので、売り上げが大して期待できるわけではない。