たしかに「あぁ、来た来た!」と迎えられることが多い。


「それは、長く関わっているからよ。十文字くんだってそうなるって。それに、パートさんは私のことスルーじゃない」


採用権限者との話は、慣れている私のほうがスムーズにいく。
しかし、棚整理に行くと、彼のほうがパートさんたちに囲まれるようになった。

隣で聞いていると、彼は積極的に話しかけてくるパートさんたちにたじたじになり笑顔で相槌を打っているだけだけど、それも立派なコミュニケーション。

彼が捕まっている間、私は黙々と棚を整頓するということが増えている。


「そんなことは全然ないです! 僕を捨てないでください」


って、捨てられそうな恋人の発言みたいじゃない。


「捨てるなら、もうとっくに捨ててるから」


ボソッとつぶやくと、真由子がさもおかしそうに肩を揺らしていた。