「篠崎さん。深沢さんとふたりきりにならないでください」
「でも、仕事が……」
「会議室でなくても、ここでできますよね?」
珍しく的確な突っ込みに、小さく首を縦に振る。
そういえば、深沢さんはいつも私を会議室に呼び出してふたりで仕事をするが、最初の打ち合わせは終わったので、もう自分のデスクでできる。
特に秘密事項を扱っているわけでもないし。
深沢さんとふたりでいると、重い空気を感じることが多いような気もするが、あれはもしかして彼ももののけを引き付けやすい体質で、私に寄ってくるもののけとの相乗効果なのかもしれない。
二倍になるというか……。
そう考えるとしっくりくる。
「十文字くんって、どうしてそんなに深沢さんを毛嫌いするの?」
「決まってるじゃないですか。僕と篠崎さんの間を引き離そうとするからですよ」
泣きそうな声で甘えてくる彼を見て、あぁ、これぞ十文字くんだと妙に心が和んだ。