「ねぇ!」
十文字くんとふたりきりになった瞬間、彼から離れて大きな声を出す。
「なんであんなことしたの? 魂胆ってなに?」
「それは……」
なぜか彼は言葉を濁す。
「適当なことを言ったの?」
「アイツが、どうしてひとりのところを狙って現れたと思ってるんだ?」
「それは……。プ、プロポーズするためじゃないの?」
感じた通りのことを口にしたのに、彼はあきれた様子で天を仰ぐ。
「お前、警戒心なさすぎ。そんなんだから付け込まれるんだ」
付け込まれるって?
「十文字くん、いつもと違うよ?」
いつもの彼なら私のことを『お前』なんて呼んだりしない。
「とにかく、アイツには近づくな」
「近づくなって……。上司に向かって失礼でしょ? えっ……ちょっと」
お小言を言った瞬間、彼は突然脱力して倒れそうになったので慌てて支える。
「も、無理……」
一旦は支えたものの、体格差がありすぎて支えきれないと悟った私は、意識を失ったように見える彼を床に寝かそうとした。