「お前の魂胆くらいお見通しなんだよ。消えろ」
「魂胆? 俺は彼女が好きなだけだ」


十文字くんに堂々と私への愛を告白する深沢さんに驚いたが、それより十文字くんの変貌ぶりに混乱している。

それに、魂胆ってなに?


「十文字くん、落ち着いて。手を離して」


まずはこの状況をなんとかしなければと必死に訴える。

すると深沢さんが彼の手をガシッとつかみ、引き離した。
しかし、視線のバトルは続いている。


「まるで子供ですね。篠崎さんも苦労するはずだ」
「なにっ!?」


再び突っかかりそうになった十文字くんを止めるために、彼に抱きついた。


「お願いだから落ち着いて」


彼の荒ぶる呼吸に気づき動揺していたけれど、私は冷静を装って静かに諭す。


「篠崎さん。なぜか彼が興奮しているから、今日は失礼するよ。でも、いい返事、待ってる」


最後まで大人の余裕を見せつけた深沢さんは、もう一度十文字くんと視線を合わせてから去っていった。