彼の心配より、カエルが消えて助かったと思ったのは黙っておかなければ。
ちょっとした罪悪感を胸に、散らばったカバンの中身を拾い上げて彼に手渡す。
それにしても、見えていたかのようにカエルにクリーンヒットだったな。
今までで最高の仕事をしたよ、十文字くん。
「あの、さ」
「はい」
「今、なんかいた?」
もしかして、私と同じように見える人だったら……と少し期待して探りを入れたが、「あぁ、彼なら学校に入っていっちゃいましたよ」とニコニコ顔だ。
さっきの高校生のことを言っているらしい。
「そうね……」
「最近厳しいですから」
「なにが?」
彼は時々妙なことを言いだすので理解できない。
「未成年に大人が手を出したらまずいですよ」
「出さないわよ!」
なんだと思ってるのよ。目の保養よ!
「バカなこと言ってないで、次行くよ」
「はい」
私は気取り直して彼と肩を並べて歩き始めた。