深沢さんがこんな積極的な人だったとは。

じっと見つめられて身動きが取れない。
というか……また鉛のように体が重くなってきて、動くのがつらい。


「でも……」


なんとか声を絞り出すと、彼は私の耳元に顔を近づけてくる。


「付き合おうよ。いや、結婚しよう」


結婚? そこまで考えているの?

びっくりするくらい艶っぽい声でささやかれて、完全に思考が停止した。


ダメだ。私の恋愛経験値では対処できない。

呆然として目を見開いていると、彼は少し離れて余裕の笑みを浮かべる。


「篠崎さんって、変なものが見える人でしょ?」
「どうしてそれを……」


驚きのあまり肯定の返事をしてしまった。


「やっぱりね。俺なら助けてあげられるよ? 今すぐにね」
「深沢さんも見えるんですか?」


しかも今すぐ助けてくれるって、もしかして体が重いのはもののけのせい? 
でも、どこにもいないよ?


「今すぐって……」
「苦しいんじゃない? 楽にしてあげるよ」